Bacchusブランドのエントリークラスとして90年代後半より製造が開始されたBacchus Universeシリーズ。Bacchusのロングセラーモデルとなっているベース「WOODLINE」をひな形とした「WJB」シリーズに代表される、エントリークラスながらも熟練エンジニアの拘りが反映されたこのラインナップは好評価を頂いてきました。近年ではローステッドメイプルなどの新たな技術も積極的に採用し、長年をかけて多彩なラインナップを築き上げています。ディバイザー創立30周年を迎える2021年、このBacchus Universeシリーズのベースの豊富なラインナップと魅力を改めて特集します!
目次
ローステッドメイプルとはメイプルを高温で加熱処理して材の中の水分や油分を揮発させることにより剛性を高めた材。ネックに使用されるとその効果は安定性だけでなくサウンドにも及び、カラッとした生鳴りと高域に特徴のある独特のトーンを生み出します。高級機種で使われることの多いこの仕様を落とし込んだ最新モデル。
指板上にフレットが無いフレットレスベース。 ピックガード無しでサンバーストカラーの映える魅力的な1本
スリムなボディ形状はそのままにアッシュボディをシースルー塗装で仕上げることにより木の温もりが伝わる雰囲気あるルックスに仕上げました。
バールポプラトップ、5ピースネック、アクティブサーキットのワンランク上のモデル。3バンドEQのプリアンプは音作りの汎用性が高く、様々なシーンで活躍します。
WJB-BP/ACTの5弦版。同じく5ピースネック、バールポプラトップ、3バンドアクティブサーキット搭載でルックスも実用性にも優れた1本です。
ボディを縮小してスケールを短くしただけではなく、ヘッドサイズの調整やパーツのセレクションなどの細部で開発者の隠れた拘りが垣間見えるミニベース。通常サイズのベースと同じ38㎜のナット幅で持ち替えても違和感が少なくなるようにしました。
OK Bass インタビュー
今回、普段から動画などでBachus Universe seriesのベースも使用している人気ベーシストOK bassにデモ演奏をしてもらいました。(※上の製品紹介欄参照)
以下の動画ではデモ演奏の後に行ったインタビューを収録しています。Universe seriesに関するプレーヤーからのリアルな声をお聞きください。
Bacchus Universe 開発担当者の声
UniverseシリーズはBacchusブランドの中では一番下位の「エントリークラス」ですが、熟練の技術者による品質管理と改良により、20年以上の歴史の中で少しずつ発展と改善を重ねてきたラインナップです。今回はディバイザー30周年企画としてUniverseシリーズの開発、品質管理に長い年月携わってきた開発担当者へのインタビューを行いました。
本企画を通して私たちがUniverseシリーズに込めてきたこだわりや熱意の一端が伝われば幸いです。
開発担当者 T プロフィール
高校卒業後、1980年に株式会社ヘッドウェイに入社。入社後は百瀬恭夫の下でHeadwayブランドのアコースティックギター製作に携わる。その後エレキギターの組込部署へ移り、製品開発担当を経て、Bacchus Universeシリーズの発足まもなくから開発と品質管理の仕事を現在まで約20年にわたり担当している。
– Bacchus Universeシリーズを担当する前、80年代から90年代のヘッドウェイ工場ではどのような仕事をしていたのか教えてください。
ヘッドウェイへの入社後はしばらく百瀬さんの下でHeadwayのアコースティックギターの製作に携わっていました。工場がエレキギターの生産をするようになってからはエレキギターの組込、セットアップを担当し、やがて製品開発を任されるようになりました。自社ブランド製品や当時行っていた他ブランドのOEM品の図面を描くところから、実際の製造に必要な治具・テンプレートの製作を主に担当しており、非常に忙しい時期でした。
– その後海外製のUniverseシリーズにはどのような経緯で関わることになりましたか。
90年代後半のシリーズ発足後まもなくから、中国のUniverseシリーズの生産工場に品質管理・検品のために出張に行くことになったことがはじめです。長い期間ヘッドウェイ工場で製品開発を担当していたため、製品のラインナップを増やすにあたって自分が必要とされました。当初は月に一回の出張でしたが、やがて本腰を入れて製品開発と管理を行うために工場に駐在することになりました。
– 海外工場への駐在となると生活が大きく変化すると思います。不安はありませんでしたか。
初めての海外生活なので不安が無かったわけではありませんが、駐在先が中国と聞いた時から関心を持ち始めていたのでどちらかと言えば好奇心の方が強かったと思います。当時の中国は自分が子供時代を過ごした70年代の日本の雰囲気に近いものも有り、むしろ懐かしいとさえ感じました。休みの日は市場に遊びにいったりしたのですが軒並みの雰囲気や並びから昔の日本を思い出しました。
– 中国語はどうやって習得しましたか。
以前に中国語を学んだことも無く駐在が決まってから出発まで時間も無いことから、本だけで独学で勉強するしか無かったわけです。駐在が始まってから工場のワーカーに自分の意志を伝えるため「切る」とか「磨く」とか、ギターの製造の中でも使われる基本的な動作の言葉から覚えていきました。当時は身振り手振りを交えながらも必死で話していたので、体に身についていったのだと思います。後で判明したのですが、当時の工場のワーカーは方言を喋る地方の出身者も多く、彼らに影響されていますので私の中国語はいまだになまっている言葉が多いのです(笑)。
– 今と比較すると当時のUniverse製品の品質にはどんな違いがありましたか?
最も気になった点はボルトオンモデルのネック幅とボディのネックジョイントポケットの幅に差違があり、ジョイントの隙間が大きいことでした。当時の工場ではすでにNCルーターが導入されていましたが、設計値と実際の仕上がりの数値に違いが出ていました。ギター製造には人の手による作業工程が必ずありますので手工での誤差が主な原因でした。この問題を改善するために各工程での目標数値の設定を細かく決めていくことから始めました。
また当時は工場のワーカーの中にギター演奏経験のある者が少なかったということも問題を生み出す理由の一つとなっていました。例えば今のラインナップには無いエレキギターの「BSG」モデルの製造中、本来であればボディの裏側に付いてなければならないストラップピンがボディの表側に付いてしまっているという問題が発生しました。演奏者であれば間違いだと気がついたと思います。今では笑い話になりますが、当時は日本への出荷予定日の直前にこの間違いが発覚したため青ざめながら慌てて国際電話をしたことを覚えています。
– 今回はUniverseシリーズのベースの特集企画なのでベースのモデルの開発に関して質問していきたいと思います。Bacchus WOODLINEを元にしたWJB-330の開発に関して教えてください。
WOODLINEのスリムなディンキーシェイプボディの感覚を再現することに注力しました。シャープな形状ではボディ外周の面取りを小さいRにする必要があるのですが、当時の木部研磨などの工員はJBモデルの大きなRに研磨することに慣れていたので小さなRを崩さずシャープさを保ったまま仕上げてもらうには大変でした。
– WJBモデルの発展系の一つとしてバールポプラトップでアクティブサーキットを採用したWJB-BP/ACT、WJB5-BP/ACTモデルものちに発売されました。開発にあたって工夫した点を教えてください。
アクティブサーキットを搭載した少し上のモデルを作りたいということで、ピックアップとプリアンプからまず手を付けました。ノイズを抑えるためにスタック構造のピックアップを採用しています。EQに関しては幅の広い音作りが可能な3バンドにしました。低音が余り出過ぎずタイトなボトムエンドになるようなサーキットにしました。
バールポプラトップの杢目を活かすためにシースルー塗装の調整にはこだわりました。特に青系の色は木の生地の色に影響を受けやすいため難しかったです。濃過ぎると杢目が見え辛く、薄過ぎると木肌の影響を受けて緑色に近づいてしまいます。このバランスを取ることと、バーストのグラデーションが滑らかになるように特に気を付けました。このほかにも安定性を重視して5ピースネックにするなどかなり拘っているモデルなので、是非手に取って見て頂きたいモデルです。
– 年月を経るにつれてカラーのバリエーションも徐々に増えてきました。これまで開発してきた中で印象に残っているカラーはありますか。
パステル系の色、PTL-SOB(パステルソニックブルー)とSLPK(シェルピンク)は開発するのに意外と苦労した色です。当初工場が持っていた塗料は原色が強く、きつい色になる傾向がありましたのでパステルの雰囲気が上手く出ませんでした。新しい塗料を採用して配合を幾度となく調整することによりようやく満足できる色になりました。またBJB-360SPモデルに塗っているラメ塗装も、色々と試行錯誤を行った色になります。こちらも特殊な塗料を使い、ラメ特有のキラキラした感じと、色としての落ち着きが両立するように改良を重ねました。
– 2020年にローステッドメイプルのモデルを開発しました。開発に当たっての経緯など教えてください。
ローステッドメイプルの音色効果を期待して開発に取り掛かりましたが、Universeの価格帯を保つために木材業者と工場の三者で交渉を重ねながらコスト面や技術的な面をクリアしていきました。ローステッド特有の乾いた鳴りのニュアンスがしっかりと出るネックになり、結果的に期待以上の物となりました。
– ミニベースであるWJB-MINIも 人気モデルとなっています。開発に当たって苦労した点はありますか。
ただ単にボディを小さくしてスケールを短くするだけだと全体の見た目のバランスが悪くなってしまうため、様々な調整を加えました。ペグ、ピックアップ、ブリッジなどのパーツはサイズ変更が難しいですが、ペグを詰めて配置してヘッドのサイズを縮小する、ピックアップとブリッジの位置関係の微調整などで自然に見えるように心がけました。コントロールパネルとノブ、ポジションマークには通常モデルよりも小さいサイズの物を特注して使っています。当初ターゲットとして想定していた子供だけではなく、経験豊かな大人のベーシストの方もWJB-MINIを購入して下さっていると耳にします。しっかりと使える楽器にしたいと思っていたので、そういった声を聞くと嬉しく思います。
–最後にUniverseシリーズの展望や今後の目標に関して教えてください。
エントリークラスという価格帯で技術的に可能なことや選択できる素材も限られる中でそれでも出来る限り良いものを作りたいという思いを胸に開発と品質改良を続けてきました。購入したお客様からのアンケートでお褒めの言葉を頂くと妥協せずに継続してきて良かったと感じます。これからもBacchusの名に恥じない製品作りを進めていきたいと思っています。
Bacchus Universe Bass
全国の楽器店で販売中!
大阪府:ミュージックランドKEY心斎橋店
神奈川県:Geek IN Box