マスタービルダーの日常 〜百瀬恭夫 編〜
Headwayが誇るマスタービルダー
百瀬・安井・降幡
の3名。
彼らが作るギターのクオリティの高さ、『職人』という職業柄、なかなか近寄りがたい印象を抱きますが…
今回はそんなマスタービルダー達の日常の姿、職人の仕事を知ってもらうべく、彼らに1日密着取材!!
第1弾 降幡新編
第2弾 安井雅人編
いよいよ残るマスタービルダーはあと一人!
今回密着取材するのは・・・
1977年の創始よりHeadwayを牽引し続けるマスタービルダー
百瀬 恭夫(ももせ やすお)
1962年18歳の頃より家具職人として木工技術を磨き、2年後の1964年にグループサウンズブームで活気に溢れるギター製作の道に足を踏み入れる。1977年に現株式会社ディバイザー代表取締役会長・八塚恵と百瀬、数人のスタッフとともに株式会社ヘッドウェイを設立し、以来数十年以上にも及び、計数千本以上ものアコースティックギター・エレキギター・エレキベースの製作を手掛ける。
2015年には「信州の名工」として表彰され、現在は自身もHeadwayマスタービルダーとしてCustomshopモデルの製作に取り組む一方、有限会社 飛鳥の技術顧問として後進の育成、工場全体の生産効率の向上にも尽力し、百瀬の製作した治具は現在も工場内の様々な場所で使用されている。
自身もギター製作家としての絶頂期といえる今なお、あくなき向上心を持って日々探求を続けながらギター製作を続けている。
メーカー自身が言うのもなんですが、日本のギタービルダーといえば真っ先に「百瀬恭夫」の名前が挙がるのではないでしょうか?
今年45周年を迎えたHeadwayの創始者の一人であり、もはや伝説のビルダーである百瀬のギター製作の1日に迫ります!!
午前 10:30
日々多忙なマスタービルダー達はあちらこちらの様子を見回っているので、なかなか3人揃っているところを見れないのですが、今日は揃ってますね!
ラッキーデーです。
百瀬の一日のスケジュールは自身のCustomshopモデル製作がメイン。
月ごとに製作スケジュールを回しているATBシリーズとはまた違い、Customshopはどんどん作業が進んでいきます。
今はブリッジサドル駒の削り作業を行っています!紙やすりを使って、手作業で底面を擦っていますが…
これだけやすれば駒の底面はツルツルにはなっているはず!
と、ここで専用の定規にあてがって具合を見はじめました。
もうツルッツルの真っ直ぐに決まってるじゃないですか〜!!
・・・ん?
よく見ると定規と駒の間に隙間が空いてますね。
百瀬:
Headwayのギターって若干ボディに膨らみをもたせて設計してるでしょ?
その膨らみのアーチに沿って駒を取り付けられるように、駒の底面も少しだけアーチがけて削ってるんだよね。
だからほら、定規当ててみると、向こう側の光が隙間から少しだけ漏れてる。
筆者:
は、はへ〜〜〜〜(凄すぎて言葉が出ない)
基本となる治具や定規はあるものの、百瀬の手作業と目で見たときの具合でその先の作業を詰めていきます。
これまで58年間ギターに向き合ってきた経験は定規には落とし込めません。
午後 13:00
13時からは予め突板を接着させていたヘッドを加工していきます。
最初はヘッドの上に板一枚接着されていただけだったのが・・・
どんどん・・・
どんどん余分な部分がカットされ、見慣れた形に整っていきます。
「線に沿って切る」ことは皆さんもやったことはあるのではないでしょうか?
一生懸命線からずれないように、ゆっくり手を進めていたと思うのですが…
百瀬は技術力が高いだけでなく、手を進める速度も凄まじく早いのです。
百瀬の弟子であり、今やマスタービルダーとして肩を並べる降幡は、百瀬の作業の速さについて、
降幡:
百瀬さんははるか上のレベルで仕事をしている。百瀬には仕上がりが見えているので、その上で刃を進めていくからスピードも早い。
と語ります。
午後 15:00
加工場からアコースティック部屋に戻り、ネックをさらに手で加工していきます。
ナイフを使ってボリュートを削り出し、優しく研磨。
ネックの具合はプレイアビリティに直結する部分なので、入念に、とはいえ削り過ぎも良くないので、具合を何度も確かめながら作業を進めていきます。
先程加工した突板とネックの部分も丸めていきます。
研磨の仕上がりは塗装の仕上がり、ひいては組み込みやサウンドの精度にも直結するので重要な工程です。
午後 16:30
みるみる作業が進んでいくので、Customshopモデルもすぐ出来るのでは?と思ってしまいますが、この速さを持ってしても、月にCustomshopモデルが完成する本数は多くても3本程度です。
ここでは指板のサイドドットを埋め込む穴を空けていきます。
専用の治具に指板を固定し、ボール盤で穴を開ける作業です。
こんな作業見たことある人は少ないのではないでしょうか!?
空けた穴にサイドドットインレイを埋め込んでいきます。
一つのドットを埋めるのに約5秒ほど。これら一連の一切無駄のない動き、まさに職人技ですね。
この指板をネックと組み合わせるとこんな感じです。
一日でここまで進みました。本当に仕事が素早い!
午後 17:30
マスタービルダー百瀬の一日はこれにて終了。明日からも自身のCustomshopボディの蟻溝加工、塗装、組み込みなどなど・・・どんどんモデルの完成に向かって進めていきます。
なにより、百瀬の凄い点は最高峰のギター製作技術を持ちながらも、今なお止まない製作意欲と飽くなき探究心を持ち、常に前へ前へ進もうとしている点。
そんな百瀬が創始者がだったからこそ、Headwayブランドは45年間成長し続け、製作できたモデルも多々あります。
その背中を追って入社したマスタービルダー安井・降幡の2名を始め、多くの社員が日々切磋琢磨しながら技術を磨き、今後も作り出されるギターは間違いなく良いものになることでしょう。
百瀬は今のHeadwayについてこう語ります。
百瀬:
私自身も後輩たちの作るギターが本当にいいものだと思っています。すべてにおいて非常に完成度が高く、本当に若手職人の成長が嬉しく、頼もしくも思っています。
日々、切磋琢磨していた自分をふと重ねたりしながら、彼らに最大限色々なものを継承できればと思っています。
百瀬へのインタビューも掲載中!
今回1日密着取材したHeadwayマスタービルダー『百瀬恭夫』ギター作りに対するの思い、また、安井・降幡の2名についてさらに掘り下げたインタビューは【アコースティックギターマガジン Vol.93】に掲載中!!
Headway45周年記念の大ボリューム特集記事、ぜひ紙面でもご覧ください!
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