【現在製作中!】ヘッドウェイ「夏桜」デザイナーインタビュー

現在製作中のヘッドウェイ飛鳥チームビルドシリーズ「HD-Yozakura ’20 Summer A,S/ATB」をはじめとする「夏桜モデル」。特徴的なインレイワークについて有限会社飛鳥 デザイナー兼エンジニアの吉田幸広に聞きました。

–今回の夏桜のデザインはいつ頃決まったんですか?

吉田:今年の夏桜について考えていたのは3月頃でしょうか。「夏桜」は2018年から始まって今年で3回目です。2018年は花火と桜を掛け合わせ、2019年はアゲハ蝶と桜を掛け合わせたテーマでデザインしました。例年はもう少しスケジュールがタイトで、限られた時間の中で考えていたのですが、今年は比較的前もって動き出せたので、そこは助かりました。

今年の夏桜は「夏がやってくる」という気持ちが高まる梅雨の季節から着想して「雨と桜」をテーマに据えました。水面に雨が落ちた波紋と桜の花びらをギター全体にレイアウトしています。

–ギターにデザインするときはどういう順番で進めているんですか?

吉田:まずは企画が立ち上がった直後にできるだけ情報を集めて頭の中で考えます。メモ用紙にラフスケッチを書いて頭の中を整理しながら、実際の図案にしていきます。

アコースティックギターの製作現場の話をすると、装飾が入る場所の中でもまず先にボディトップの「口輪(サウンドホールロゼッタ)」の加工を進めないといけません。だからデザインも口輪の図案を決めるところからスタートします。

口輪が決まると次に天神(ヘッドトップ)、その後指板、(装飾する場合は)ブリッジ、最後にピックガードが決まります。

–指板インレイについて、ポジションマークの位置を守るのはデザインする上で縛られませんか?

吉田:ポジションマークはこの職種になってからずっと言われていることなので、今となってはそこまで意識することはなくなりました。慣れるまでは多少四苦八苦しました。

–デザイン作業の他にどんな仕事がありますか?

吉田:私の部署は基本的に私一人で、デザインだけではなく、CNCの加工データ作成・加工のほか彫刻機やレーザー加工機を動かすためのオペレーティングがあります。例えばエレキギターだと、新しくSSHレイアウトのモデルを作る企画が立ち上がった時に、これまで3シングルのレイアウトしか加工データが無い場合に新しくデータを作ったり、同じSSHでも使うピックアップの寸法が違えばさらにそれ専用の加工データを作ったり。

飛鳥のギター製作はカスタムオーダー品や特注モデル案件も多いので、細かくて、納期がタイトなものが多めかも知れません。

いわゆるオペレーティング作業が6割、この合間を縫ってデザインのラフを考え、実際に形に起こす作業が残り4割という感じで進めています。複数の機械を動かすためどうしてもスキマ時間が生まれます。そういった合間の2〜3分を大事にアイデアを練ったりデザインに充てています。

–最近は何のデザインをしていますか?

吉田:秋に発表するギターデザインが佳境に入っています。7本を一つのテーマで束ねる形になるので、どこに共通性をもたせてどこにアクセントを加えるか、頭を悩ませています。

6月末完成に向けてギター製作もラストスパート中です。完成品のお披露目をお楽しみにお待ち下さい。